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私と犬

JUGEMテーマ:日記・一般

 

直木賞受賞作「少年と犬」を読んだ。

野良犬となった犬がさまざまな境遇の人と出会い、その人たちの運命に関わっていく短編集。

本のカバーに書いてある、「人という愚かな種のために、神が遣わした贈り物」がぴったりの心温まる小説だ。

 

私はこれまでの人生で、数匹の犬と暮らした経験がある。

 

私の母は動物が好きだった。

私が幼いころ、スピッツを飼っていた。

スピッツはよく吠えた。

家族や家で働くパン職人にはよくなついていた。

しかし、知らない人には吠えて、噛みついていく。

スピッツは騒がしい犬だ。

今思えば、小さな犬小屋に入れられて、哀れな犬だった。

やがて、スピッツが死んで、母親は2匹の猫を飼い出した。

 

私は犬を飼っている人と結婚した。

犬種はプードルで、名前はハニー。

義父は動物園の世話をする仕事をしていたので、動物園から引き取った犬だったようだ。

動物園内のイベントで芸を披露していただけに、大人しく賢い犬だった。

結婚前、妻の実家に通っていたころ、私はよく散歩させた。

散歩という言葉を発するだけで、すぐに玄関口に飛んでいった。

結婚後すぐ義父が亡くなり、義母と犬は私の家の近くに引っ越してきた。

すでに、年老いていた犬は数年後亡くなった。

 

阪神大震災で家が半壊し、自宅を建て直した。

それを機に、尼崎でパン屋をしていた私の両親が同居することになった。

パン屋を辞めて、仕事が無くなった母親は老人鬱となり、認知症の症状が出てきた。

そんな母を心配した私と姉は母が好きだった犬を飼うことにした。

岐阜にいた姉が買ってきた犬はウェルシュコーギーだった。

ウランと名付けたコーギーは人懐っこい犬で、母にとても懐いていた。

やがて、両親はスポーツ用品販売の商売をしている姉の家へ引っ越していった。

母の認知症を遅らせるために、商品の値札付けなどの簡単な作業を手伝ってもらうことにしたのだ。

ウランは我が家に残り、私たち家族で可愛がった。

 

突然、息子の身体にガンが見つかり、放射線や抗ガン剤治療をすることになった。

免疫力が低下して感染症に罹る心配があるので、ウランを娘の婚約者のKさん宅に預かってもらうことになった。

Kさんの家には祖父母、両親、Kさん兄弟が住んでいて、ウランは家族全員から可愛がられた。

 

1年後、息子が亡くなった。

ウランはKさん家族との生活に慣れて、Kさん家族にとってかけがえのない存在になっていた。

娘がKさんと結婚することで家族同士になるのだからと、ウランは正式にKさんの家族になった。

それから十数年の時が過ぎ、ウランは後ろ足が動かなくなり、徐々に体力が衰えてきた。

2年前、ウランはKさん家族に看取られて、亡くなった。

Kさんの両親はしばらくの間、ペットロスで寂しい日々を過ごされたようだ。

 

現役時代の先輩、Sさんはしばらく連絡が取れなかった。

退職後も時々メールが届いていたのだが、急にメールが来なくなった。

何度電話をしても、不在通話だった。

心配になり、隣の西宮市の自宅を訪ねた。

すると、Sさんは自宅におられた。

携帯が壊れて、連絡ができなかったという。

Sさんの家にはダックスフンドの犬クッキーがいた。

クッキーはとても人懐っこい犬で、私が行くといつも足元から離れず、クンクンと鼻を鳴らしていた。

Sさんとクッキーとの出会いは偶然だった。

夫婦で買い物に出かけた時、池の中にはまっている犬を見つけた。

Sさんは助け上げて、近くの交番に届けた。

交番の巡査は保健所に連れて行くと言い、もし飼い主が現れない場合は殺処分になるだろうと告げられた。

Sさんは不憫に思い、自宅に連れて帰った。

それ以来、Sさんにとって、クッキーはかけがえのない家族になった。

 

私が訪問した数日後、Sさんは自宅で倒れ、救急車に運ばれた。

脳出血だと判り、緊急手術をした。

2か月間入院して、自宅に戻ってきた時、奥さんからクッキーが亡くなったことを告げられた。

それ以来、Sさんはペットロスで、傷心の日々を送っている。

私は時々電話をして、ペットロスを慰めている。

 

高い値段で、犬や猫が売られている。

見ていると、飼ってみたい衝動に襲われる。

横にいる妻も、愛らしい犬を見ている。

 

「かわいいな。飼ってみるか」

ペットショップに立ち寄った時、ガラスケースに入れられた犬を見ている妻に言う。

妻は首を振り、「いや、やめとくわ」と返す。

そして、「ハニーの最後の姿が忘れられない」と。

 

ソフトバンクの白い犬がテレビに映るたびに、私は「飼いたいな」と思うのだが…。

author:金ブン, category:人生, 09:24
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