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公金横領

JUGEMテーマ:ニュース

 

何年かごとに、女性による多額の公金横領事件が発生する。

今回発覚したのは大手重機械工業の労働組合資金の横領。

横領金額は6億円超だとか。

容疑者の女は競走馬6頭を買ったり、ポルシェを乗り回したりしていたという。

よくもまぁ、こんな大金を抜き取れたものだと思うのだが…。

 

私が勤めていた会社でも、労組資金の横領があった。

横領の金額は覚えていないが、小さな組合にしてはかなり多額だったと思う。

横領した組合員のK君は、私が執行委員をしていたころ、支部長や職場委員を務めていたのでよく知っていた。

私が執行委員を退いた何年か後、三役の書記長を就いていた。

 

私は2年弱しか執行委員をしていないが、その間春闘を2回経験した。

春闘になると、一時仕事を離れて、妥結するまで組合事務所に常駐する。

組合事務所といっても、3DKの賃貸アパートだった

1日や2日で妥結すればいいが、長引くと4、5日事務所に詰めることになる。

委員長や書記長が団交へ行って、賃上げの回答をもらってくるとみんなで協議するのだが、会社側がなかなか返事を出さない時は、ただ部屋の中で待っているだけ。

何もすることもなく、ヒマだった。

そんな時決まって、トランプの博打会場になっていた。

 

そのトランプゲームは「カチカチ」とかいって、かなり高い金額を掛け合っていた。

私は横で観戦しているだけで、参加することはなかった。

博才が無いことや負けて大金を失う痛みを自覚していたからだ。

それに、高いレートの博打に使う小遣い銭がなかったと言っていい。

 

会社は旅行業が主で、私は旅行とは異業種の広告代理業の部門に勤務していた。

旅行業の社員には添乗や送迎などの業務から発生する手当があり、それは給料とは別に現金で支給される。

また、旅行業というのは旅行の交通手段や宿泊だけでなく、宴会やコンパニオンの手配などもする。

いわば、水商売みたいなところがある。

謝礼や心づけなどの旅行代金とは別の収入が入ったりする。

旅行業の社員たちはその金を家庭に入れることなく、小遣い銭としてふところに入れていた人もいた。

それらの金が賭け金になっていたようだ。

残念ながら、私が勤務していた広告部門にそんな種類の収入はなかった。

だから、博打に参加することもなく、近くをジョギングしたり本を読んだりして、待ち時間を潰していた。

 

「今日はあかん、10万も負けや」とか、「10万勝った」とか言い合っているのを、ご開帳の傍らで聞いていると、他人事ながら大丈夫かなと心配になったものだ。

 

団体の旅行費用はすべてが銀行振り込みではなく、営業マンが現金で集金したりする。

会社の経理に入金するまでに、旅行費用の100万を超える現金が手元に残ることもある。

つい誘惑に負けて、その金を博打や飲み代に使ってしまう社員がいるのだ。

社員は次の集金でそれを穴埋めしたりして、自転車操業を繰り返すことになる。

ところが、そんなごまかしはいずれ破綻する。

そのころ、会社の公金を横領する事案が起こり、懲戒免職になる人がしばしば現れた。

 

さて、書記長をしていたK君だが、労働組合資金を使い込んで懲戒免職になった。

その処罰が載っている社達の回覧を見た時、驚いたものだ。

なぜなら、私が知っているK君は熱意を持って組合活動をしていた印象があったし、熱く会社の経営を批判していたのを思い出したからだ。

何に使ったか知る由もないが、長く労働組合の幹部をしていたことから想像すると、博打や飲み屋の資金に消えてしまったのだろう。

 

金の魅力とは恐ろしいもの。

少しでも労働待遇が良くなるようにと、組合員が給料の中からコツコツと納めている金であることを、K君も十分承知していたはずだ。

最初は少しだけ借りるつもりで懐に入れたのだろう。

快楽に負けて、徐々に自制心を失ってしまったのだ。

 

解雇されてからしばらくして、偶然駅のホームでK君に出会った。

少し挨拶しただけで、私は一言も口を開かなかった。

話す言葉が見つからなかった。

すると、気まずかったのか、相手が話しかけてきた。

「会社が悪かったんですよ」と、経営者への不満をつぶやいていた。

自分の非を会社の経営に転嫁する、情けない姿だった。

私は少し苦笑いをして、黙ったまま到着した電車に乗り込んだ。

 

6億もの労働組合費を使い込んだ女の写真をみて、この時のことを思い出した。

勤めていた会社はこの後、債務超過になりリストラが行われ、挙句の果てに分割されてしまった。

経営環境の悪化を前に、労働組合は成すすべもなかった。

author:金ブン, category:社会ネタ, 09:42
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