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遠い祖先に

JUGEMテーマ:家庭

 

井原西鶴の「好色五人女」の三巻に「暦屋おさん」という話がある。

今から三百年以上前の天和年間に、京都で姦通事件を起こして処刑された、<おさんと茂兵衛>の実話を題材にした物語だ。

この話は近松門左衛門が浄瑠璃「大経師昔暦」でも取り上げている。

 

なぜ<おさんと茂兵衛>の話を書くかというと、この茂兵衛なる人物が私の遠い祖先だということ知ったからだ。

「好色五人女」や「大経師昔暦」ではかなり物語が脚色してあるのだが、伝わるところの話はこうだ。

 

茂兵衛の実家金川家は氷上郡船城村山田(現丹波市氷上町山田)にあり、この地方では有名な大地主で豪農だった。

戦国時代には黒井城(城主荻野直正)で兵糧が必要になると、その必要量を運び込んで援助したという。

9歳の茂兵衛にはおさんという7歳になる許嫁がいたが、まだ幼いので許嫁という意識はない。

おさんは山田村から西北に山一つ越えたところにある南由良の出身で、槍の名人といわれる由良豊後の長女である。

 

金川家には「降呼力」と呼ばれる伝来の名刀があった。

或る時、武芸者の由良豊後がこの「降呼力」を貸してほしいと言ってきた。

金川家は将来親戚関係になることもあり、仕方なく承諾した。

数年後、返却を求めたが、豊後は又貸しをして行方がわからなくなっていた。

責任を感じた豊後は娘のおさんを刀探しの旅に出発させた。

これを聞いた金川家でも、三男の茂兵衛を捜索に旅立たせた。

数年がたって、茂兵衛は京都の大経師屋(表具屋)で男衆として住み込みをしており、偶然にもおさんは女中頭兼妾としてこの家に入り込んでいた。

当初お互いに気づかなかったが、何かの機会にお互い同じ故郷であり、おまけに許嫁だったことを知ることになる。

ふたりはたちまち惹かれあうようになり、通じ合うようになった。

そのうち情事が旦那にばれそうになり、一緒に故郷の丹波へ駆け落ちする。

結局二人はお尋ね者になってしまうのである。

 

こうなれば、金川家も由良家もお尋ね者の二人を家へ入れるわけにはいかない。

それに、庄屋でもあり村の役人でもあるので、犯人を逮捕しなければならない。

考えた末、近くの森(現在「おさんの森」という)に小さな家を建てて、ふたりを住まわせたのである。

ところが、二人の噂が京都にまで届で、大経師屋では変装した密偵を派遣し、居所を探した。

結局、奉行所に逮捕される。

この時代、妾は妻と一緒ということで、姦通罪で死罪ということになる。

こうして、二人は京都市内を引き回され、はりつけ刑に処せられたが、当時の民衆はその内情を知ってからおさんと茂兵衛に同情して、奉行所の非人道的なやり方を非難した。

後に、この民衆感情を西鶴や近松が取り上げ、小説や浄瑠璃に仕立て上げたという。

 

山田村から南に下った柏原町の山すそに、おさんと茂兵衛を祀る祠があり、その付近は「おさんの森」と呼ばれている。

この祠を参ると咳が治るというので、近郊からだけではなく遠くは大阪などから参詣者が多いという。

この謂れは、小屋に隠れていた二人だったが、おさんが咳をしたため、猿回しに変装した密偵に居所が判り捕まってしまったという話からきている。

 

以上の内容は神戸新聞社発行「謎の丹波路」に、<ゼンソクの森(おさん茂兵衛の道行きとセキの神)>の章から抜粋した。

書物の最後には<寛政六年(1794)発行の「丹波志」には<金川甚之>の項目があり、「本は船井郡鎌谷のひとなり、甚之屋敷跡字金川という流あり。今本家金川七右衛門、庄屋喜八郎 二軒、定紋梅鉢」と記されている>との引用があり、この<金川甚之>が山田村の豪農の末裔であり、与兵衛の実家であることは信用できるというのだ。

 

昨年、金川家を継いでいた叔父さんが亡くなった時、法事の席で「金川株系図」を見せてもらい、コピーをいただいた。

 

 

その一番上に、<甚之>の名前が載っており、横に天文元年(1736)の記述があった。

それから遡ること50年前に、おさんと茂兵衛の事件は発生したようだ。

 

金川家では茂兵衛が犯罪人として処刑されたことで、以後この話を秘し隠しており、現在に至るまで真実を語ることを避けていたという。

それでも茂兵衛が可哀そうなので、戒名もない五輪塔立てて弔ったようだ。

 

私はその話を始めて知ったのだが、姉に話すと昔法事の席で酒に酔った親戚の人からこの話を聞いたという。

 

一度、<おさんの森>と<与兵衛の墓>を訪ねてみたいと思っている。

author:金ブン, category:家庭の話題, 09:46
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