- 敗れても敗れても
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2018.07.28 Saturday
JUGEMテーマ:ニュース
クソが付くほど暑い毎日だが、夏は野球が熱い。
今年は一度母校の試合を見ようと思っていたが、1回戦で負けてしまった。
母校が甲子園出場を果たしてくれたらと思うのだが…。
3年前、新聞のスポーツ欄を見て驚いた。
「東大野球部、連敗94で止まる」
東京六大学野球は春と秋のリーグ戦がある。
東大は2010年の秋から2015年の春まで、負け続けていた。
この記事を見ると、東京六大学に東大が参加していることが不思議だった。
他の私学と違って、東大は大きなハンディを背負っている。
入学するのが極めて難しいこと。
当然、私学のようなスポーツ推薦入学がない。
他の私学にはプロ野球に進むスラッガーたちが集まってくる。
なぜ、東大はそんな私学の野球部と同じグラウンドに立つのか。
門田隆将の「敗れても敗れても(東大野球部「百年」の奮戦)」を読めば、その答えがある。
六大学野球は昭和の初め、近所の大学が対抗戦をすることで始まった。
東大、慶應、法政、明治、立教、早稲田の六校だ。
最後に参加したのが東大だった。
最初は戦力が拮抗していた。
しかし、時代とともに私立校が強くなっていった。
東大は唯一の国立大学なので、受験に合格しないと入学出来ない。
いくら野球が上手でも、入試に合格しないと東大野球部に入れない。
関東には東都大学リーグというのもあるが、ここは4部制。
リーグ戦で負けると1部リーグから下の2部リーグに落ちる。
だが、東京六大学リーグではいくら負けても落ちることがない。
リーグが1部しかないからだ。
つまり、東京六大学野球リーグというのは<伝統>で成り立っているのだ。
弱いからといって、排除されることがない。
そうかといって、勝負への執念が欠けているわけではない。
東大は優勝を目指している。
だが、結果はいつも勝ち点さえ取れない有り様だ。
それでも練習で技術を磨き、勝つために必死なのだ。
著書の中で、部員だったOBのひとりが語っている。
「東大野球部の優勝は「夢」です。夢がたとえ実現しなくても、その夢にむかっていけばいいんじゃないかと思います。今シーズン優勝すると言ったら、それは、ただのバカです。“やがては優勝できるチームに向かって、われわれは進んで行く”というのと、“今シーズン優勝するというのは違うんですよ。私は、今シーズン優勝するとか、三位になるとか、ひと言も言ったことが無いんです。」
スポーツの真髄は頂点を目指していく過程にあると云える。
さて、プロ野球だが…。
今では全くと言って良いほど、野球のテレビ観戦をしなくなってしまった。
だが、新聞のスポーツ欄では阪神タイガースの試合結果は真っ先に確認してしまう。
大概、「また、負けとるな」と言って、新聞を閉じることになる。
30年前は阪神の勝ち負けに熱くなっていた。
阪神タイガースが優勝した1985年、関西は熱狂した。
長年の阪神ファンだった私も21年ぶりの優勝に酔いしれた。
日本シリーズでは西武に勝利し、球団史上初めての日本一にもなった。
私は小学校の時から阪神タイガースのファンだった。
住んでいたのが阪神沿線だったし、実家は「阪神パン」というパン屋をしていた。
パン職人たちはほとんどが阪神ファンだった。
実家の近くは阪神ファンの巣窟で、阪神が勝った翌日、近所の市場では必ず安売りをしていた。
ファンになったのは小学生のころ。
そのころ、阪神は2度優勝している。
1度目は小山と村山の投手が活躍し、打者は並木、後に監督で優勝する吉田、三宅等の選手がいた。
島倉千代子の旦那になった藤本や外人のソロムコなんて選手も活躍した。
2度目は東京オリンピックの年で、村山と外人のバッキーが活躍し、打者には小山とトレードされた山内というホームランバッターがいた。
阪神が2度目の優勝した翌年から、巨人は9連覇する。
阪神タイガースにとっては暗黒の9年間だった。
リーグ優勝に手が届きそうになるが、いつもコケテしまう。
でも私には、江夏と田淵が「黄金のバッテリー」と云われて活躍していた<その頃>が一番輝いていた。
甲子園で江夏が投げて、堀内から田淵がホームランを打った試合は今でもはっきりと覚えている。
「優勝する夢」にしがみ付いていた。
今ではあまり関心が無くなってしまったが、遠くに行ってしまった昔の恋人を時折思い出すように、新聞のスポーツ面を眺めている。
「敗れても敗れても(東大野球部「百年」の奮戦)」のあとがきで、著者門田隆将が書いている言葉が印象に残っている。
<目標がたとえ実現不可能であっても、それでも、この組織の「挑戦」は延々とつづくのである。理屈に合わないかもしれない目標に向かって、地を這うような努力をつづけている組織というのは数少ない。よくよく考えてみれば、いまの時代に、これほど不器用で、かつ、不合理な組織が、ほかにどれほどあるだろうか。>
東大野球部の胴上げを見てみたいものだ。
死ぬまでに、一度。
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