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還暦を迎えた妻

JUGEMテーマ:家庭

 

<ゆり子は、夏の朝、庭にユリの花が咲き誇る中、生まれました。

そして、ゆり子と命名されました。>

 

猪瀬直樹は妻ゆり子の葬儀で、挨拶する。

ふたりの出会いは大学生の時。

「目と目が合った瞬間、光の速度で一心同体で生きると決めたんです」と、運命的な出会いを語る。

 

大学卒業後、二人は上京し、同棲生活を始める。

猪瀬は作家を目指すが、なかなか目が出ず、今で言うフリーターとなる。

2人の子供に恵まれるが生活は安定せず、ゆり子が小学校の教師になり猪瀬を支え続ける。

徐々に作家として認められるようになり、「ミカドの肖像」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞して人気作家の仲間入りをする。

 

2001年に小泉内閣の行革断行評議会のメンバーになってから、政治の表舞台に顔を出す。

道路公団推進委員会での活躍がマスコミに取り上げられ、小泉政権の行政改革推進の立役者となり注目される。

 

その頃の猪瀬直樹は弁舌に切れ味が良く、私は大きな期待を抱いていた。

道路族や道路に絡む建設業などのしがらみが無い民間人だから、思い切った改革をやり遂げることが出来たのだろう。

その後、石原都知事の下で副知事に就任し、石原都知事辞任の後東京都知事に立候補する。

 

その頃から、人生のバイオリズムが狂ってきた。

東京都知事に当選した翌年、ゆり子に脳腫瘍が見つかり余命宣言を受ける。

オリンピック招致活動の真っ最中での出来事だった。

2020年東京オリンピック決定の朗報を知ること無く、ゆり子は亡くなった。

 

オリンピック招致決定と同じ頃、徳洲会グループからの資金提供問題が明るみに出て、都議会で袋叩きに遭う。

都議会の席上5000万円に模した発泡スチロールを無理やり押し込む情けない姿が、再三テレビに映し出される。

そして、都知事を辞任する。

 

その1年後に、妻ゆり子との思い出を綴った本「さよならと言ってなかった」を上梓する。

 

作家城山三郎の「そうか、君はもういないのか」や映画監督新藤兼人の「愛妻記」など、先立った連れ合いへの思い出を綴った本は多い。

甘ったるい本を読む気がしなかったが、図書館で何気なく見つけたこの本を手にした。

妻に先立たれた訳でもないが、妻の還暦の誕生日が近付いていたから、読む気になった。

 

結婚は出会い頭の交通事故のようなものだと云われる。

いろんな偶然が重なって、男女が結びつく。

 

私たちは社内結婚だ。

妻の父はK電鉄会社の子会社に勤めていたため、妻は紹介でグループ会社のK社に入社した。

妻が入社する5年前に、私はK社に入社している。

 

私は首都圏のT旅行会社に内定していたが、卒業旅行で立ち寄った東京の雰囲気が合わないような気持ちになり、帰阪してすぐに内定を辞退した。

そして、一旦辞退していた関西が活動拠点のK社へ再度内定をお願いしたのだ。

何とか内定を復活してもらい、K社に入社した。

もし卒業旅行で東京に立ち寄ることが無かったら、私はT社に勤めているのだから、妻と知り合うことも無かっただろう。

 

K社に入社後、私は旅行部ではなく、広告代理店部に配属になった。

K社は旅行部の他に、電車の広告を扱う広告代理店部と駅の売店などを運営する商務部があった。

本来、旅行業を志望して入社したのだから、まさか旅行ではなく広告の仕事をすることになるとは思わなかった。

この配属が無かったら、妻と親しくなる機会は無かった。

 

知り合って40年が経った。

今週、妻は還暦の誕生日を迎えた。

貧しい時から連れ添った妻を「糟糠(そうこう)の妻」という。

そんなに貧しい思いをさせた記憶はないが、阪神大震災や息子の死を経験し、苦楽を共にした同志ではある。

 

長い結婚生活は倦怠期、冷静期、沈滞期を経て、お互いが空気のような存在になるようだ。

今は、居なくては困ってしまう。

 

不満は無いが、ただひとつ困ることがある。

妻は霊感が強いことだ。

たまに幽霊を見たと言い、幽霊を見た時は身近な人が死ぬとか言ったりする。

気持ち悪いではないか。

身近な人が私でないことを祈るばかりだ。

 

<トミコは初雪が降る頃、富山で生まれました。

そして、富子と命名されました。>

妻の葬儀ではそんな挨拶しようと思っているが、先に私が天国へ行きそうな気がする。

 

妻の誕生日に食べた和食(宝塚・花水木)

author:金ブン, category:家庭の話題, 09:50
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