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他者

JUGEMテーマ:映画

 

「人生は他者だ」

 

映画「永い言い訳」のラストシーンで、本木雅弘演じる主人公津村啓がノートに書き込む。

 

売れっ子作家津村が浮気をしている時、旅行へ出かけた妻がバス事故で死亡する。

子供のいない夫婦関係はもうとっくに冷めていたが、マスコミを通じて嫁さんを失くした男を演じ、ドキュメンタリー番組に出演したりする。

 

主人公津村の本名(衣笠幸夫)は広島のスーパースター衣笠幸雄にあやかって付けられた名前で、いつもその偉人と比較されていることに劣等感を覚えている。

下積み生活の末、妻の支えも合って富と名声を得た人気作家である。

しかし、この人物はどこか不安定で、内面に弱さを抱えている。

 

その対比として、二人の子供を持つ、竹原ピストルが演じる父親(大宮陽一)が描かれる。

陽一の妻は津村の妻の友人で、津村の妻と一緒に旅行に出かけ、バス事故で亡くなった。

津村と大宮は被害者会で親しくなり、陽一のふたりの子供の面倒を看ることになる。

 

トラック運転手の陽一は決して裕福ではなく、家の中は汚れ、子供の育児に悩んでいるが、一途で純粋な男。

妻の死をまともに受け止め、率直に泣き、哀しむ。

対して、主人公の津村は妻が死んだ時別の女と寝ていたことに罪悪感を覚えながら、突っ張りながら暮している。

その姿に迷いのようなものが透けて見え、どこか壊れそうだ。

やがて、陽一の子供たちと暮すうちに家族の温かさを知り、自分の生活を支配する空虚さを感じ始める。

 

人生は他者との関わりの中で成り立っている。

主人公は、その当たり前のことを見逃していたことに気付く。

 

他者とは何だろう。

 

私はこれまで、数え切れないほどの人たちと知り合った。

だが、ほとんどの人たちは、遠く離れてしまった。

もう二度と会うことが無いでだろう人がほとんどだ。

 

そして、わずかに他者が細く繋がっている。

中学時代、高校時代、大学時代の友人、退職した会社の先輩や同僚たち…。

それぞれ、ある時期に同じ時間を過ごした人たちだ。

 

なぜ、今もその人たちと繋がっているのだろうか。

 

かれらに共通項があるとしたら、それは<迷い>のような気がする。

何かにこだわりながら、かれらは<迷い>を抱えている。

話していて、そんな姿が垣間見える。

迷いながら、もがきながら、進むべき道を模索している。

そこに、独特の人間臭が漂っている。

私はかれらの臭いを好んで嗅いでいる。

 

今の私はそういう人たちの影響を受けて、生かされている。

 

やはり、人生は他者だ。

author:金ブン, category:映画鑑賞, 09:44
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