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Still Life

棺桶に入るのは、自分ひとりだけ。

死ぬ時はひとりなんだと、良く解っている。

葬式にこだわりは全くない。

しなくても良いとさえ思っている。

遺骨にしても散骨で良い。

墓もあっても無くても良いし…。

自分が死んでからのことはどうでも良いと思っている。

 

ただ、天国に旅立つ時は誰かがそばにいてほしいものだ。

 

お彼岸に、映画「おみおくりの作法」を観た。

観終わった後、誰かに薦めたくなる。

そんな映画だった。

 

主人公のジョン・メイは地区の民生係をしている。

誰にも看取られずに死んでいった人たちの後始末をする仕事をしている。

仕事をする上で、決めていることがある。

・亡くなった方の写真を見つけ出す。
・故人の宗教を探し出す。
・その人にあった弔辞を書く。
・その葬儀にふさわしいBGMを選ぶ。
・故人の知人を探し,葬儀に招待する。
・葬儀に参列する。 

几帳面な性格のメイはそれらの決めごとを誠実に実行している。

しかし、合理性を求める社会にはなじまない。

上司から「君は仕事に時間をかけすぎる」と言われ、人員整理の対象になり、解雇を言い渡される。

その頃、ジョン・メイの真向いのアパートで、アルコール中毒患者の遺体が見つかる。

近くに住みながら話すことも無かった隣人の孤独死にショックを受ける。

部屋から見つかった古いアルバムを手掛かりに、その人生の軌跡を追いかける。

故人を知る人々を訪ね歩き、ひとり娘に出会う。

参列を拒む娘を説得して、葬儀の段取りを終えるのだが…。

静かに映し出されるラストシーンに、思わず胸が熱くなる。

 

邦題「おみおくりの作法」の原題は「Still Life

直訳すれば、「静物」とか「静物画」となるのだが、ここでは「静かな人生」がふさわしいようだ。

孤独な主人公ジョン・メイの静かな日常、主演エディ・マーサンの静かな演技、そして静かに語りかけるラストシーン…。

邦題も「Still Life」で良かったのではないか。

 

「お墓参りをしたい」

彼岸のシルバーウィークに、姉が娘と孫を連れてやってきた。

岐阜に住んでいる姉はネット販売の会社をしている。

平日は忙しくて家を空けられない。

姉は久しく母親のお墓に参っていないことを気に掛けていた。

 

4年前亡くなった母親の納骨は悲惨だった。

台風が近づいていて、天気が大荒れの日だったのだ。

わざわざそんな日を選んで納骨することも無かったのだが、岐阜から姉が来ることもあって、日を決めていた。

仕方なく、雨風が吹き荒れる中、無理やり母の遺骨を墓の中に納めた。

墓地を管理する担当者に墓を動かしてもらい、中に遺骨を入れたのだが、ほとんど投げ入れるような感じだった。

私も姉も、母親に申し訳ないと思う気持ちが今でも胸に引っかかっている。

 

墓は五月山にある。

大阪を一望できる山の斜面に、霊園が広がっている。

 

霊園

 

その眺望はすばらしい。

遠くにあべのハルカスが見える。

 

広い霊園にたくさんの死者が眠っている。

景色がどんなに素晴らしくても、死者には見えない。

供花を手向けても、その美しさを感じることはない。

お墓は死者のためにあるようで、そうではない。

 

墓を掃除し、供花を供え、線香を立てて手を合わせる。

不思議と、心が和む。

生きている者にとって、死者に対して敬意を持って向き合うこと、その人生を振り返り慈しむことは大切なことだ。
 

映画「Still life」が静かに教えてくれた。

author:金ブン, category:映画鑑賞, 15:50
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